革とX-Pac。
並べてみると、少し奇妙な組み合わせです。
革は、人類が古くから使ってきた素材です。
傷がつき、色が変わり、柔らかくなり、使う人によって表情が変わっていく。
一方のX-Pacは、現代的な機能素材です。
軽く、薄く、強く、水に強い。
アウトドア用品やバッグなどで使われ、その構造自体が性能を生み出します。
一方は経年変化。
もう一方は機能性。
しかし、どちらかだけを選ぶ必要があるのでしょうか。
革だけで財布を作る必要はあるのか
革には独特の魅力があります。
手触りがあり、時間とともに変化し、修理しながら長く使うことができます。
一方で、財布のすべてを革で作る合理的な理由があるかというと、そうではない。
たとえばカードポケット。
革を何枚も重ねれば厚くなります。
薄く漉けば作れますが、強度とのバランスを考えなければなりません。
ここでX-Pacのような薄く強い素材を使えば、構造をかなり軽くできます。
だったら、
革が得意な仕事は革に任せ、X-Pacが得意な仕事はX-Pacに任せればいい。
非常に単純な発想です。
素材に上下関係を作らない
ものづくりでは、ときどき素材そのものが価値になります。
本革だから高級。
手縫いだから上質。
天然素材だから良い。
しかし素材は、本来目的ではなく手段のはずです。
今回の財布では、外殻を一枚革で構成することを考えています。
手で最も触れる部分であり、外部との接触によって傷が付き、その人固有の表情が生まれていく場所だからです。
一方、内側のカードポケットにはX-Pacを使う。
ここでは経年変化より、
- 薄さ。
- 軽さ。
- 引裂きに対する強さ。
- カードを保持するための適度な構造性。
そうした性能の方が重要だからです。
小銭入れは、その中間にあります。
手で頻繁に触れる部分には革。
薄く強くしたい部分にはX-Pac。
一つの財布の中で素材を使い分けます。
異素材だからこそ修理しやすい
この組み合わせには、意匠以外にも意味があります。
革とX-Pacでは寿命も劣化の仕方も違います。
だからこそ、一体化しすぎない。
革がまだ使えるのにX-Pacが傷んだなら、X-Pac部分だけ交換する。
X-Pacが問題なくても革の一部が大きく傷んだなら、革側を直す。
異なる素材を使うなら、それぞれが異なる時間で老いていくことまで考える。
素材の違いを、交換可能な構造によって受け止める。
それがRepair First Designとの接点です。
古い技術と新しい素材を対立させない
手縫いとミシン。
伝統的素材と新時代の素材。
それぞれの得意なところを見極め、組み直す。
ものづくりに必要なのは、「どちらが正しいか」を決めることではなく、
なぜ、それをそこに使うのか。
を考えることなのだと思います。
REPAIR FIRST DESIGN / MATERIAL STUDY 01
革とX-Pacという異なる素材を、一つの財布の中でどう使い分けるか。現在、構造と素材の組み合わせを検討しています。
